鍼治療に使われる一種である、「皮内鍼」をご存知でしょうか?皮内鍼は痛みや疲労、こりなどに良く効くため、通常の鍼灸治療の最後に残ってしまった痛みの除去などにも効果的です。

鍼灸治療の中でもポピュラーな部類ですが、構造や特徴、効果を網羅されている方は意外と少ないのではないでしょうか?

この記事では皮内鍼の概要から使い方までを詳しく紹介していきます。

皮内鍼とは

皮内鍼とは皮内鍼(ひないしん)は鍼の形態の一種で、置き鍼と呼ばれる治療法に使われます。髪の毛よりも細く短い鍼を皮膚組織へ刺し込み、シールや絆創膏などで固定した上で1日~数日そのままにしておくことで効果が出る治療法です。

昭和初期に群馬県で活動していた鍼灸師である赤羽幸兵衛(あかばね・こうべい)が考案したと言われています。

皮内鍼が考案された経緯

皮内鍼が考案されるまでは留置鍼(りゅうちしん)という治療法が用いられていました。これは鍼を刺してから10分~20分ほど放置しておくことで、一般的な治療法よりも効果が見込まれていた治療法です。

しかし、鍼を刺す際に筋肉に達してしまうことも多いため、長時間患者を動かさないようにしておかなければなりませんでした。

そこで患者が動いても問題が無く、皮下組織のみに刺し込んで固定するよう考案されたのが皮内鍼なのです。

皮内鍼と似ている”円皮鍼”との違い

皮内鍼と似ているものに”円皮鍼”という鍼があります。鍼治療に慣れ親しんだ患者さんが多い治療院やサロンでは、「これらがどう違うのか?」という質問をいただくこともあるようです。

これら2つはどちらも「置き鍼」と呼ばれるもので、細く短い鍼を皮膚に刺し込んだ状態にしておくことで、持続的に刺激を与えることを目的としています。このように、効果や施術方法については似ているのですが、皮内鍼と円皮鍼の大きな違いは皮膚へ刺し込む方法です。

皮内鍼鍼とテープがそれぞれ独立しており、鍼が皮膚と水平になる様に傾けて刺し込みます。

対して円皮鍼は鍼と皮膚に貼り付けておくための円状のテープが一体になっています。先に絆創膏の1点を貼り付けてから、鍼を皮膚に対して真っ直ぐ垂直に刺し込みます。貼り付けた後は、絆創膏の外周を円を描くように押さえたら完了です。

どちらも通常の鍼灸治療よりも痛みが少なく、鍼治療にネガティブなイメージを持つ患者さんにも提案しやすいため、不安があり初めて治療を受けられるという患者さんなどにおすすめです。

皮内鍼・円皮鍼の構造

皮内鍼はそのものの長さ5mmほどで、太さ0.16~0.2mmです。そして鍼の持ち手部分として、長さ2mmほどの竜頭と呼ばれる鍼柄がついています。竜頭はリングのようになっており、鍼全体が皮膚に入ってしまうことはありません。

一方、円皮鍼はメーカーにも寄りますが、プラスチック製のプレートに絆創膏が付いており、絆創膏の粘着面の真ん中に鍼が付いているのが一般的です。この鍼は特殊なステンレススチールでできており、折れたり錆びたりしないことが特徴です。

皮内鍼の使い方と選ぶ基準

皮内鍼の使い方と選ぶ基準
皮内鍼の使い方

皮内鍼は非常に短いため、ピンセットを使って刺し込みます。

①まずあらかじめ竜頭に幅5mmくらいのテープを貼っておく(鍼の頭の部分にテープを貼ることから、このテープは「枕」と呼ばれています)

②ピンセットで竜頭をつまみ、皮膚の水平面に20度ほど傾けた角度で2mm~3mm刺し込む。

③その後、刺し込んだ鍼を覆うようにテープで止めておく(鍼全体を覆うようにして貼り付けるため、このテープは「布団」と呼ばれています)

水平に刺していくのは、まっすぐに刺すと身体を動かした時に痛みが生じてしまうので、それを防ぐためです。また、布団で固定しておくのは、刺し込んだ鍼に衣服が触れて抜けてしまうのを防ぐためです。

「枕」と「布団」で鍼をしっかり固定するため鍼が動くことはなく、患者さんが日常的な動作をしていてもほとんど違和感を感じないようになっています。

どのメーカーの皮内鍼を選べば良いか

皮内鍼に限らず鍼は様々なメーカーが開発しており、施術者が扱いやすくなるよう日々研究されています。この記事では詳しい商品比較やレビューは行いませんが、現役鍼灸師の方の皮内鍼の使用感についてのレビューを一部記載致します。

色々な鍼を試してみた中で、私はアサヒの皮内鍼が使いやすいと感じました。他の利用者さんからも良い評価が多いらしく、アサヒの鍼は使いやすさに定評があるようです。

特徴としては鍼部分はステンレス製で、鏡面光沢の鍼先となっています。使ってみた限りでは、一度に多くの鍼を使用する場面に適しているように感じました。

私が鍼を選んだ基準は大きく以下の3つです。

・筋肉の返りが明確な刺入感
・手になじむ持ちやすさ
・片手での操作のしやすさ

同じメーカーでも少し特徴が違う製品があったりするので、別のメーカーの鍼も含めて新しく使ってみると発見があるかもしれません。

ご自身に合う使い心地の良い鍼を探してみてはいかがでしょうか?

皮内鍼の効果

皮内鍼の効果

皮内鍼は東洋医学療法の中でも代表的な治療法になります。

局所に刺し込むことで、鎮痛効果を安全に長時間維持させる事が出来ます。また、鎮痛効果に加え、こりをほぐしたり、顔のしわの改善したりなど美容面にも効果があるのが特徴です。

刺し込んだ皮内鍼からは身体を持続的に押す力が働き、身体からは鍼に対して押し返そうとする力が働きます。この仕組みが血行を促進し、こりや痛みを和らげていくのです。

肩こり・腰痛などの治療や痛みの緩和に

「痛みが生じている箇所は気血の流れが悪くなっているので、鍼を刺すことで気血の渋滞を除く」というのが鍼灸治療の考え方です。そのため、通常の鍼灸治療の最後に痛みが残った場合にも皮内鍼は利用されることがあります。

例えば肩こりであれば硬くなっている筋肉に皮内鍼を刺し、長時間かけて血行を改善していくことで筋肉を柔らかくします。

腰に痛みがあれば痛みが強いと感じる箇所に直接刺すこともありますし、直接ではなく腰の痛みに効果があるツボに対して利用することもあります。

生理痛への効果

皮内鍼はツボへの使用で生理痛を和らげると言われています。施術のタイミングとしては生理の1週間ほど前が望ましいでしょう。

血の巡りを改善するツボに皮内鍼を刺すことで刺激し続け、生理痛が軽減することが多いようです。

ツボへの刺激で症状を和らげるには知識がなければ難しいため、患者さん自身で行える円皮鍼では効果が見込みづらいかもしれません。

ご自身で円皮鍼を使われるのであれば、無理にツボへのアプローチを試みるのではなく、単純に痛みが強い箇所に対して貼ってもらうようアドバイスしてあげてください。

むくみや顔のしわなどの美容効果

皮内鍼は、痛みだけでなくむくみや美容面にも皮内鍼は効果を発揮します。脚のむくみに対しては水分代謝を促すツボを刺激すれば少しずつむくみが減り、脚のだるさも和らいでいくでしょう。

美容の一環として顔に利用するのであれば、シワがある、ハリがない、硬さを感じるといった所に皮内鍼を刺すと効果があります。

治療としてだけでなく美容面に対しての効果もアピールできれば、鍼治療への不安が拭えない方にも皮内鍼を入り口としてより施術を受け入れられやすくなるはずです。

皮内鍼の疑問点

皮内鍼の疑問点

ここまでで皮内鍼について紹介してきましたが、疑問に感じられる点もあるかと思います。よくある質問とその答えを以下に掲載致しますので、参考としてご覧ください。

Q1.何日ほどであれば貼ったままで良いのでしょうか?
A1.3~4日程で貼り替えてください。

Q2. 鍼治療に不安があるのですが、安全性は問題ありませんか?
A2. 皮内鍼に限らず鍼灸に使う鍼は滅菌されており、厳重な管理が義務付けられているため、安全性は特に配慮されています。

Q3. 鍼は折れないのでしょうか?
A3. 皮内鍼の鍼はメーカーにも寄りますが、特殊な製法で作られているため折れたり、錆びたりすることはありません。

Q4. 皮膚が強くない人が使用しても大丈夫でしょうか?
A4. 鍼は基本的に完全滅菌されています。医療用の特殊な絆創膏を使用して肌に優しい造りになっていますが、かぶれ、かゆみ生じやすい方は施術後に注意しておいてください。

Q5.鍼を貼り付けた状態のまま入浴しても大丈夫でしょうか?
A5.お風呂にはそのまま入ることができますが、鍼を貼っている部分は強くこすらないようにして下さい。絆創膏が剥がれやすくなってきます。

Q6.一度刺した鍼は何度でも使えますか?
A6.鍼は基本的に使い捨てるため再使用はできません。市販されている円皮鍼などにも使用上の注意が記載されていますので、そちらに則ってご使用下さい。

まとめ

ここまでで皮内鍼について色々な角度からご紹介しました。

皮内鍼はセイリン、アサヒ、ユニコなど多くのメーカーさんで取り扱いがあります。お客様によっても鍼灸師によっても、効果の感じやすさや施術の行いやすさは製品ごとに多種多様です。

初めて取り扱う際は色々な製品をご自身で比較しながら試してみて、最も扱いやすいものを選んでいくと良いでしょう。

また、皮内鍼や円皮鍼は比較的簡単な部類の治療方法であり、通常の鍼治療の後に症状が残った際に利用することが多いです。

技術的に簡単であるとはいえ、頼り過ぎてしまっていると貼り付ける箇所が多くなってしまいますし、普段の治療が甘くなっていきがちなので注意しておきましょう。

このメディアでは今後もこうしたコラムを掲載していきますので、鍼灸に携わるあなたの一助となっていければ幸いです。