最近は自宅で簡単にできるお灸が増えてきており、肩こりや腰痛などを改善する目的で利用している方も多くなっています。ただ火を使うお灸の場合、やけどが心配な方もいるでしょう。

施術所ではどの程度のやけどが危険で、どの程度なら安全なのかを見極めてくれますが、自宅でお灸をする場合、どのように判断すればよいのでしょうか。お灸のメカニズムと合わせて紹介します。

お灸とやけどの関係

お灸 やけど

かつてはしつけの一環として、「灸(やいと)を据える」ことがありました。やけどをするほどの熱さで、いたずらした子供を懲らしめたのものです。

施術所でも小さなやけどを作ることがありますが、お灸でやけどを作ることに何か意味はあるのでしょうか。

あえて小さなやけどを作る

最近は高熱のお灸を据える施術所は少ないですが、あえて小さなやけどを作るところもあります。

「やけど」というと痛みをともなったり、醜い跡ができたりするイメージがあるかもしれませんが、国家資格を持った鍼灸師だからこそ、後の残らない小さなやけどを作れるのです。

症状が改善するメカニズム

お灸によって小さなやけどを作ることにはしっかりと意味があります。お灸をしてやけどができた場所には、それを治そうとして白血球が集まってきます。

白血球に含まれるマクロファージは、筋肉にたまった疲労物質を食べるはたらきがあります。そこで、コリのある場所などにお灸を据えてあえてやけどをつくり、コリを解消するのです。

お灸でやけどをした場合の対処法

やけど 対処法

お灸でやけどをした場合、初期の対応が重要となります。痛みや跡を残さないためにも、正しい対処法を身につけましょう。

常温に近い水を5分程度患部にあてる

やけどをすると、冷たい水などで冷やした方が良いと言われますが、実際には常温に近い水を、5分ほど患部にあてるのが最適です。

また、あまり長い時間患部を水にあてていると、皮膚の表面がふやけてしまうため、完治までを長引かせてしまいます。

ワセリンやラップで患部を保護する

やけどをした場所の皮膚からは皮脂が奪われるため、外部の刺激から肌を守ってくれる「バリア」がない状態です。

そのため、ワセリンを塗って皮膚を守ります。ただし、香料が入っているようなワセリンはかえって皮膚への刺激となるため、無香料のワセリンを選びましょう。

また、ワセリンを塗った上からラップを巻くと、さらに皮膚のバリア機能が強化されます。

その際、ラップの真ん中に穴をあけておきましょう。完全に密閉してしまうと、傷口から染み出た浸出液に雑菌が繁殖してしまい、感染症のリスクが増大します。

皮膚科を受診する

やけどをした場合に、皮膚科を受診した方が良いのか判断する材料が水ぶくれです。水ぶくれができているようであれば、なるべく早めに皮膚科を受診しましょう。

やけどは痛みをともなうのはもちろんですが、精神面に与えるショックも大きいものです。不安なことがあればすぐに専門家の指導を仰ぎましょう。

お灸でやけどをした場合こんな対処法はNG

お灸 禁止
患部に氷など冷たいものをあてる

やけどをすると慌てて氷をあてるなどしますが、絶対にしてはいけません。

やけどをした場所に氷をあてると、かえってやけどを悪化させてしまったり、凍傷を起こしたりするリスクが高くなります。

水ぶくれをつぶす

やけどをすると水ぶくれができるケースもありますが、それを潰すのは絶対にやめましょう。やけどが治りにくくなるのはもちろん、潰した場所から細菌が侵入し、感染症を発症する可能性が高くなります。

もし水ぶくれが自然に破れてしまったら、ワセリンを塗ってラップで保護したうえで、なるべく早めに皮膚科を受診するよう心がけましょう。

自己判断で軟膏を塗る

ご自宅にアロエやオロナイン軟膏などを常備されている方もいると思いますが、自己判断でそれらを患部に塗ることは避けましょう。

私たちの手には無数の細菌が付着しているため、手で軟膏を塗ると細菌感染するリスクが高くなります。特に、水ぶくれができているような場合は絶対にNGです。

絆創膏を貼る

やけどをした場所に絆創膏を貼る方がいますが、これもやけどの対処法としてはNGです。なぜなら、絆創膏のガーゼの部分に傷口からの浸出液が付着してしまい、剥がすときにまた傷を作ってしまうからです。

剥がすたびに傷を作っていてはいつまで経ってもやけどが治りませんし、その分、感染症のリスクも高まることとなります。

こんな時にお灸をするとやけどしやすい

お灸 血行

最近のお灸はなるべくやけどをしないよう、工夫して作られています。それでも、場合によってはやけどのリスクが高まることもあります。

一時的に血行が良くなっているとき

お風呂に入った後や、食事をした後など、一時的に血行が良くなっているときはやけどをしやすいので、お灸をしない方が良いとされています。

また、熱があるときやお酒を飲んでいる時も一時的に血行が良くなっているので、やはりお灸をするべきではありません。鍼灸の施術所でも酒気帯びや高熱の方へのお灸を原則としてお断りしています。

皮膚の表面が濡れているとき

汗をかいた後や、シャワーを浴びた後など、皮膚の表面が濡れているときにお灸をすると、やけどの可能性が高くなります。そのため、お灸をする前に皮膚の表面をしっかりと拭いておきましょう。

お灸によるやけど跡を残さないために気を付けること

お灸 気をつける

もしお灸によるやけどができた場合、跡を残さないようにすることが肝心です。そのためには患部を清潔に保ち、感染症対策をおこなうことが重要です。

患部を清潔に保つ

やけどの跡を残さないためには、患部を清潔に保っておくことが一番大事です。1日に1回は必ずやけどした場所を流水できれいに洗い流し、清潔に保ちましょう。

最初の内は浸出液が出てきて大変ですが、その都度、面倒くさがらずにワセリンを塗り、ラップで保護するようにしましょう。

感染症対策をおこなう

やけどに限らず、感染症を併発してしまうと、患部に傷跡が残りやすくなります。そのため、患部から浸出液が出ているようなときには、入浴を控えてシャワーだけで済ませましょう。

特に家族がいる場合、湯船につかると細菌感染するリスクが増します。また、シャワーを浴びるときは、患部にだけ流水をかけるのではなく、全身を清潔に保つよう心がけましょう。

お灸によるやけどが怖い場合の対策

お灸 対処

お灸は正しく使えば、それほどやけどのリスクが高くありません。それでもやはりやけどが怖いという方は、以下のようなことに気を付けてみて下さい。

熱く感じたらすぐにお灸を取る

お灸によるやけどを予防するもっとも簡単な方法が、「熱いと感じたらすぐにお灸を取る」ことです。特にもぐさを使ってお灸をする場合、近くに灰皿などを用意しておき、熱いと感じたらすぐに取るよう心がけましょう。

パートナーと2人でおこなう

肩や腰にお灸をする場合など、熱いと感じてもすぐに取れないこともあります。また、慌ててお灸を取ると、取りこぼしてしまい、床にコゲを作る可能性もあります。

そのような場合、パートナーと一緒にお灸をするとよいでしょう。2人でお灸をすれば、自分の手が届かないところであっても、お灸を据えられます。

台座灸を利用する

最近は台座灸と言って、もぐさが直接皮膚に触れない、お肌に貼って使うタイプのお灸が家庭では主流となっています。

もちろん、台座灸であってもやけどをする可能性はあるのですが、もぐさよりもはるかに扱いが楽なので、リスクは低くなります。

火を使わないお灸にする

台座灸の中には、火を使わないタイプのお灸もあります。火を使わないお灸は皮膚面の温度が40度から50度と、その他のお灸よりも低いのが特徴です。

ただ、臀部など温熱効果を感じにくい場所に長時間貼っていると、低温やけどをするリスクがあります。また、通常のお灸と同様、発熱時や食後は使用を控えましょう。

鍼灸師に相談する

お灸でやけどをしたくなければ、プロフェッショナルである鍼灸師に相談するとよいでしょう。鍼灸師に相談すれば、この場所にはこんなお灸をこれくらいの時間…と詳しく教えてくれます。

お灸を上手に使えばやけどの心配はほとんどありません

・お灸でできる小さなやけどはコリからの回復を早めるためのもの
・お灸でやけどをしたら初期の対応が重要
・水ぶくれは絶対に潰さずに皮膚科で診てもらう
・お灸によるやけどが心配な場合は鍼灸師に相談する

お灸は奈良時代からおこなわれている施術法の一種で、西洋医学が日本に入ってくるまでは、日本の医療の中心を担う存在でした。なぜなら、お灸を据えた場所にできるやけどに白血球が集まることで、患部の回復を早める効果が期待できるからです。

台座灸などはやけどのリスクが低いですが、もしやけどができたら常温に近い水で患部を5分ほど冷やし、患部を清潔に保つよう意識しましょう。水ぶくれができたら絶対に潰さず、なるべく早めに皮膚科で診てもらうことが重要です。

とはいうものの、家庭で使うようなお灸は基本的に安全を重視して作られているので、使用上の注意をよく読んで、正しく使うように心がけましょう。