和鍼(わしん)の効果と言えば肩こり冷え体調の改善といったことが真っ先に思い浮かぶと思います。

しかし昨今では、和鍼の利用方法はそれだけに留まらず、ケガの治療メンタルの向上美容効果動物への治療効果など、様々な分野へと発展し始めています。

そこで今回は、和鍼について深く掘り下げ、どのような効果が期待されるのか、中国針との違いは何なのかを徹底解説します。

和鍼(わしん)とは

鍼治療はもともと中国の伝統医療で使われてきた技法です。経穴と言われるいわゆるツボに鍼で刺激を与え、経絡と言われるエネルギーの通り道を正常にして、気の流れを円滑にし、人間が本来持つ免疫力自然治癒力の向上を促します。

その鍼治療には大きく2種類の鍼を利用します。その一つが、和鍼です。

和鍼とは鍼治療に使う『鍼(はり)』の事で、もう一つを中国針と言います。和鍼には銀製とステンレス製の2種類があります。

和鍼と中国針の違い

和鍼と中国針の違い

和鍼と中国針との違いは、長さ・太さ、そして、使用方法が違います。ちなみに、中国針は『針』という漢字を使うのに対して、和鍼は『鍼』という漢字を使います。

古代の中国では、切る針、刺さない針など9つの種類がありますが、現在一般的に使われている、毫鍼(ごうしん)と呼ばれる中国針と比較していきます。

一般的に治療に使われる鍼の種類を下に比較してみました。

和鍼:太さ0.12mm~0.25mm 長さ30mm~50mm
中国針太さ0.32mm~0.38mm 長さ25m~75mm

和鍼は中国針に比べて短くて細いものが一般的です。故に、痛みも比較的穏やかと言われています。

撚鍼法(ねんしんほう)と管鍼法(かんしんほう)

中国針撚鍼法(ねんしんほう)といわれる方法で、鍼自体を持ちぐっと押し込むように刺していきます。

それに対して和鍼は、鍼自体を持つのではなく、鍼を鍼よりもやや短い管に入れ、わずかに出た柄の部分をトントンと叩き打つ事で刺入していきます。これを管鍼法(かんしんほう)と言います。

人間の皮膚は意外に硬く、細く短い鍼であればあるほど撚鍼法(ねんしんほう)は難しいとされています。そのために管を使う方法が日本で発明されました。

いずれも鍼は、皮膚の下にあるツボに刺す必要があります。皮膚にスッと鍼が入っていくように力を入れて押し込むのですが、髪の毛よりも細いため、変に力が入ると鍼がたわんでしまい皮膚を傷つける可能性があります。鍼に力が込められているのに、鍼がたわんでいない状態を、『芯を捉える』と言います。

この芯を捉える事が一番容易なのが、管鍼法(かんしんほう)を使う和鍼なのです。

もちろん、中国針には中国針の良さがあります。

容易だから効き目がないだとかそういう事ではなく、腕の良い鍼灸師ほど当該箇所や目的、患者さんの体質や性格に合わせて両方を使い分ける事ができます。つまり、どの鍼を使っても治療が出来る事が理想なのです。

和鍼に期待できる3つの効果

効果① 日々のケアとしての鍼治療

最近、日本では空前のフィットネスブームに伴い、いつまでも若くありたい・綺麗でいたいと思う人がどんどん増えてきました。

そのため、単に治療に鍼を用いるのみならず、肌の新陳代謝向上・リラクゼーション・疲労回復など日々のケアとしての鍼の需要も伸びてきています。

鍼は薬と違い副作用がないため、注目され始めているのでしょう。

以前は、治療やスポーツ医療などといった専門性が高いように思えた鍼治療が身近になってきました。そんなケアとしての鍼治療には、痛みが穏やかで芯を捉えやすい和鍼が最適といえるでしょう。

効果② 動物にも鍼治療

動物、特に犬を中心に鍼灸が盛んになってきている事はご存知でしょうか?

近年、動物も人間同様に高齢化が進み、西洋医学のみだけでの対応ができなくなってきました。どこかを治すだけではなく、身体の不調を改善していく必要ができたのです。

獣医鍼灸専門の獣医師も存在するくらいニーズが増えています。動物も人間と同じように鍼での血流改善や身体の不調を整える事が期待されています。

しかし、言葉が話せない上に痛みにも敏感なペットに鍼を打つのはなかなか難しいというのが現状です。そのため、細く短く、繊細な和鍼を用いた施術をすることが一般的になっているのです。

効果③ 統合医療として

日本では、ストレスからくる身体と心の不調を抱える人が年々増えてきており、『統合医療』が注目され始めています。

統合医療とは、西洋医学の対処療法と東洋医学の原因療法の融合の事で、「病気」を治すだけではなく、「人」として不調の原因にアプローチする医療法になります。

また、女性特有の悩みには、病気そのものを治すだけではケアしきれない事が多いです。例えば、不安やストレスなどを抱え、ホルモンのバランスが崩れる事で不調になる事もあります。

その点和鍼には、身体を中から温め、内臓の働きを良くするよう助けるため、女性に多い冷え性の症状の改善などに一役をかっているのです。

和鍼だからこそ活きる技術

細く短く、繊細という性質が和鍼にあります。

その和鍼の性質が存分に生かされる箇所がです。

顔面や頭皮に鍼を打つことにより、ツボや細胞を刺激して、リフトアップや血流改善、リラックスや眼精疲労を改善することができる美容鍼は、和鍼の特徴が生かされる分野です。

美容鍼の多くは、筋肉ではなく皮膚の細胞を刺激するため深く刺す必要がなく、和鍼の中でも特に細く短い鍼を使います。

人の顔にはたくさんの毛細血管が通っており、他の部位に比べると敏感で、内出血しやすく、繊細で痛みを感じやすいところです。そのため、中国針のような太い鍼を使用すると内出血が起こる可能性が高くなります。

和鍼はその点、細く、短いという特性上そのリスクを最小限に抑えることができます。ですから美容鍼として使うには和鍼が大変適していると言えるのです。

最近では、美容鍼専門をうたう治療院が増えている事からも、和鍼が期待されている証拠とも言えるでしょう。

鍼灸治療はWHOも認めている

鍼灸は中国から伝わる伝統医療です。いわゆる西洋学で使用されている科学や生理学や解剖学、その他の治療のメカニズムに基づいたものではなく、経絡や気の流れという中国から伝わる伝統医療です。それ故に長年、プラシーボ効果の可能性が高いとされてきました。

しかし、その流れが変わりつつあります。

2018年6月に発表されたWHO(世界保健機関)のICD(疾病及び関連保険問題の国際統計分類)という医療機関で、鍼や漢方が「伝統医学の病態(Traditional Medicine)‐モジュールⅠ」として追加されました。

つまり、五臓の基本概念や陰証、陽証などの分類が医療行為としての鍼に関する分類が追加された、ということです。

参考:厚生労働省

このように、鍼治療は日々進化しており、世界もそれに追い付こうとしています。

実際にこの発表がなされて、海外でも鍼灸が注目され始めています。ヨーロッパのみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドでは日に日に東洋医学への需要も高まっており、西洋医学と東洋医学の共働も進歩し続けているのです。

まとめ

和鍼について述べてきましたがいかがでしたでしょうか?

和鍼の特徴としては、

・和鍼は中国針に比べて短くて細い。そのため、痛みも比較的穏やか
・管鍼法(かんしんほう)という鍼の打ち方
・美容鍼として使える

このような和鍼は、以下のさまざまな分野で効果を発揮しています。

・美容分野
・動物鍼灸
・統合医療

その効果を高める背景には、

・芯を捉えやすい
・細く短く繊細な箇所にも使用できる
・治療だけでなくケアとしても効果を発揮できる

という和鍼ならではの特徴が深く関係していると言えるでしょう。

今まで交わる事がなかった西洋医学と東洋医学が融合した統合医療のように、今後も、さまざまな分野での和鍼の効果に対する期待は、さらに需要が高まっていく事でしょう。体調がいまいちという時、次は和鍼を試してみるのはいかがですか?