鍼灸師は、国家資格を取得して仕事をする専門性の高い職種です。
そのため、苦労して取った資格を活かして、独立開業する人も少なくありません。
ところで、鍼灸師として独立開業するには、どんな点に気をつけなければならないのでしょうか。
ここでは、鍼灸院を開業するための注意事項を見ていきます。

□鍼灸院開業の手順

鍼灸院を開業するには、以下の手順で準備を行います。

*事前相談

鍼灸院を開業する前に、開業予定地を管轄する保健所に相談に行かなければなりません。
開業手続きに必要な書類の種類や書き方、鍼灸院の構造や設備、名前の付け方などについて相談することになっています。
鍼灸院の広さや設備、名前の付け方などに細かい制約があるため、それに則っているかどうかを確認するためにも、保健所で事前に相談することが大切です。

ちなみに、保健所の事前相談は、確かに事前相談をした証として、保健所担当者の捺印が必要です。
この捺印がないと、開業できないので注意しましょう。

*鍼灸院の広さと設備

鍼灸院を開業するにあたり、確保すべき面積や設備などが決められています。
鍼灸院の施術室は、6.6平方メートル以上の専用室が必要です。
施術室は、壁やパーテーションなどで、完全に仕切ってあることが条件です。

さらに、施術室には扉の設置も義務付けられています。
また、待合室は3.3平方メートル以上の広さが必要です。
このほか、施術室は面積の7分の1以上の部分が外気に開放できるか、換気装置があることが条件です。

施術に必要な器具や手を消毒できる設備があり、常に清潔に保って照明や換気が十分であることも必要です。
また、無資格者が施術することのないように、施術者1人につき施術台1台が望ましいとされています。

*鍼灸院の名称

鍼灸院は病院ではないため、病院と間違えてしまうような名称をつけることはできません。
「〇〇病院」という名称がつけられないのはもちろん、はり科、きゅう科など、病院の診療科とまぎらわしい「科」の文字や鍼灸医など「医」の文字も使えません。

*開業

すべての準備が整ったら、管轄の保健所に開業届を提出します。

開業届は、鍼灸院の開業から10日以内に提出するよう義務付けられており、10日を過ぎて提出する場合は、遅延した理由書を添付する必要があります。

*開業届に必要な書類

鍼灸院の開業届に必要な書類は、提出用と控え用の2部必要です。
また、以下の書類も一緒に提出します。

・業務に従事する施術者の免許証の原本と写し
・施術所平面図(施術室や待合室の面積、外気開放部分や換気扇の位置、施術用器具や消毒設備などの配置が分かること)
・施術所への案内図
・開設者が法人の場合は定款の写しと登記謄本(発行より6カ月以内)

*現地確認調査

保健所が開業届を受理すると、保健所職員が鍼灸院を訪問して実地検査が行われ、施術所全般、施術室、待合室、換気、採光、清潔保持、面積や消毒設備などについて、構造設備基準の規定を満たしているかチェックします。

・防火装置
消化器などの消火設備が整っているかを確認します。

・廃棄物
普通の廃棄物と、使用済みの鍼のような、感染性廃棄物がちゃんと分別されているかを確認します。
また、未使用鍼がしっかり保管されているかどうかも、チェック対象です。

・広告
紛らわしい広告を出していないか、法律に則った広告になっているか、誇大広告がないかなどもチェックされます。

・防犯対策
鍼灸院の防犯対策や、個人情報の管理がしっかりされているかチェックされます。

*まだある開業準備

上記以外にも、開業に向けて以下のものが揃っていることが必要です。

・施術台、枕やタオルなどの備品
・待合室の椅子やスリッパ
・受付台、電話、会計のためのレジなどの機器
・鍼を管理するための収納容器
・カーテンやブラインド
・患者情報管理用のパソコンや鍵がかかるロッカーなど
・鍼灸院の看板
・鍼灸院のホームページ

□広告に関する注意事項

広告には、下記の事項について記載できることが法律で認められています。
ただし、これ以外はどのような理由があっても、広告には掲載できないことになっているので注意しましょう。

・施術者の氏名、住所
・業務の種類
・施術所の名称、電話番号、所在場所
・施術日、施術時間
・その他厚生労働大臣が指定する事項
(小児鍼、医療保険療養費支給申請ができる旨、予約による施術の実施、休日や夜間における施術の実施、出張による施術の実施、駐車設備など)

ちなみに、広告には「〇〇流鍼灸術」「〇〇に効果のある鍼灸治療」などといった、鍼灸師の技能や具体的な施術方法、施術者の経歴などは記載できないことになっています。
広告や看板はこのように法律で細かく決められていますが、ホームページは広告とは違ってもっと自由に記載できます。

たとえば、広告には掲載できない施術方法や鍼灸師の経歴なども、ホームページには記載可能です。
このため、広告に該当するチラシや看板などには簡単な説明だけを記載して、チラシにQRコードやホームページのURLを掲載して、ホームページで詳しい説明をする方法もあります。

□備品を揃えよう

まだ正式に開業届を出していなくても、具体的に開業するためのテナントを探し、契約が決まったら、開業に向けて備品を揃え始めましょう。
揃える備品はいろいろありますが、その中でも鍼灸院を開くなら絶対に必要なものが3つあります。

*鍼

鍼灸院を始める前に、早めに鍼を買い揃えておきましょう。
鍼にはいろんな種類があり、太いものから細いものまであって、長さもそれぞれ違います。
また、材質もステンレスや金、銀などがあります。

どんな症状の患者が来ても対応できるように、いろんな鍼を揃えておくことが必要です。
ちなみに、使い捨てできる鍼もありますが、鍼を繰り返し使う場合は、オートクレーブ、乾熱滅菌器などの設備も必要です。

*治療ベッド

治療ベッドも、鍼灸院を始めるなら必要です。
鍼灸治療の際に患者が横になるための施術台は、患者が快適に過ごせるのはもちろん、施術しやすさも選ぶ際の重要な基準となります。
鍼灸師の身長によって治療ベッドの高さや長さ、幅などを決めるといいでしょう。

*バストマット

患者がうつ伏せになるときに使うマットです。
患者の胸元に敷いて使用しますが、これを敷くことによって、うつ伏せになっても息苦しさがなくなります。
鍼灸の施術はかなり長時間になりますから、患者がリラックスして、施術を受けられる状況を作ってあげることが大切です。

ここまで鍼灸院の開業について見てきましたが、実際に開業するまでには、かなりクリアしなければならないステップがあります。
開業手続きもいろいろ準備するものがあるため、何が必要なのかあらかじめ調べておいて、ひとつずつ片づけていくようにしましょう。

開業に関する準備がすべて整わないと、鍼灸院を開くことはできませんから、先にテナントを決めて開業手続きに入るようなことをすると、場合によっては手続きに何カ月もかかるようなことになります。
その間無駄にテナント料だけを、払い続けるといった事態にもなりかねません。
そうならないためにも、すべての準備を完璧に進めていくことが大切です。

□まとめ

鍼灸師の資格を取り、独立開業するにはいろんな手続きが必要となります。
その手続きは、まず管轄の保険所に事前相談に行くことから始まります。
その後開業のために必要なことは、すべて記述しましたので参考にしてください。
鍼灸院を開業するにあたって、名称や広告について細かい注意事項があるので、必ず守るようにしましょう。

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